ステンドグラスの玄関扉 |
長老たちと相談したところ、宇留賀正輝さんのステンドグラスはどうだろうか、ということになりました。正輝さんは、やはり数年前に召天された会員の息子さんで、湖畔でグラススタジオを主宰されている方です。美しいものを愛したWM兄は、この宇留賀さんのガラス作品も大好きで、「オレ、弟子入りしたい」といっていたほどだとのこと。WM兄の記念にふさわしいものだということで、早速宇留賀さんに連絡しました。
本当は、礼拝堂正面にいれたいところですが、壁のところにあとから窓用の穴をあけるというのは、ちょっと現実的ではありませんし、後ろが住宅なので日差しがあたらず、光が重要な要素であるステンドグラスには不向きとわかりました。他の案もいろいろ検討しましたが、結局、玄関扉をかえて、そこにグラスをいれることになりました。
グラススタジオ・ウルガのウェブサイトに、工房の基本コンセプトが書いてあります。
「日本人の感性を生かした繊細でやさしいステンドグラスを作りたい」。
「『ステンドグラスは商品ではなく作品であるべき』との考えから分業はせず、打ち合わせ、デザインを含めた制作のすべてを一人の手で行うことを大切にしています。」
「お客様は作り手と話し”ステンドグラスの表現の可能性を知る”ことで具体的な要望を伝えることができます。作り手はお客様の”想い””期待”を実感することで長い制作期間のモティベーションを維持することが出来るのです。」
本当にその通りでした。
宇留賀さんは何度も教会に来られて、「どうしてほしいか」ということを問うてきました。
わたしたちも最初は、「ステンドグラスのことはわからないや」と戸惑いつつ、問われる中でいろいろと想いを自由に話し、構図やガラスの色などについて希望を出してゆきました。
図面を作成した段階での、デザインの意図はこういうものです。
天を象徴する線と、地を象徴する線が、上と下にすっと横にはいる。
地では、男と女が天をみあげて手をのばして祈っている。
天からは、聖霊の注ぎを暗示するような線がおりてくる。
そこかしこに、聖霊の実を感じさせるキラキラ光るものがおどっている。
数ヶ月が過ぎ、「あれ、クリスマスに間に合うのだろうか」と不安も少し頭をもたげはじめた頃、宇留賀さんから電話があり、12月17日に扉を換え、19日にステンドグラスをいれる、ということになりました。
17日 大工さんが来て、今まで使ってきたアルミ扉をはずし、新しい扉をいれてくれました。他の作品製作中で、あまり寝ていないという宇留賀さんも現場に足を運ばれて、職人さんに声をかけています。仕事が丁寧ですね。
今まであった欄間がなくなっただけで随分と扉が大きくなった気がします。
19日 いよいよステンドグラスの取り付けです。
取り付け完了。ついにできあがりました!
外から見るとこんな感じです。
中からはこうなります。
ガラスに近づいてみると、グラスを通して光が屈折するのが面白い味を出しているのがわかります。
上の写真ではうまく伝えられませんでしたが、午後の光がさしてくると、カットガラスが美しく光り、教会内の壁や床に七色の影がうつしだされます。その場所を刻々とかえながら。
宇留賀さんは、25日のクリスマス礼拝に出席してくださり、皆に挨拶してくださいました。その中で、自分はいつも同じように美しいものというより、ある瞬間に美をはなつようなものを作りたいと思っている、という趣旨のことをいわれました。大変印象に残る言葉でした。
どうか、この玄関扉が、町の方々が教会へ導きいれられる祝福の扉となりますように。また、教会の中にいるものたちにとっては、神の創造された世界の美しさを感じて賛美する窓となりますように。
「これはすごい!」と一目見て絶賛するようなステンドグラスではなく、「これで完成?」とか、「いつ色をいれるの?」と思う方もおられるのですが、じっくりと長い間つきあって「ああ、これはいいなあ」としみじみとわかってくるような作品なんですね。
WMさんも、これなら、「良し!」と言ってくださるでしょう。
寄贈者であるWHさんも、宇留賀さんの御母上との親密な交わりを思い起こして、とても喜んでくださっています。幾重もの意味で、意義深い記念となりました。
良いものが与えられたことを感謝。