ブレーキを踏んだ男たち |
忘れないようにここに書いておこうと思う。
「クルマで一番大事な部分は、きっと、ブレーキだろう」という書き出しで始まるコラム。
まず、東名高速道路で起きた、大型トラックのタイヤが脱落して、対向車線を走っていた観光バスに直撃、運転手の関谷さんという57歳の男性が亡くなった事故の、重要なエピソードを紹介する。
運転手がタイヤに直撃されたので、バスの暴走という事態も起こりえたのだが、運転歴25年のベテランドライバー関谷さんは、ガイドによれば、運転席を直撃されたのにハンドルを放さず、ブレーキを踏み続けていたという。乗客の言葉、「運転手さんに生かしてもらった」。
そしてもう一つブレーキの話。
17日の名古屋高裁。自衛隊のイラク派遣差し止め訴訟の控訴審判決が出た。歴史的な違憲判断である。多国籍軍の兵士を運ぶ航空自衛隊のイラクでの活動は武力行使にあたり、憲法9条1項違反であると認定した。このことについて、「筆洗」氏は、「日本国憲法、ことに9条は、この国が二度と戦争へと暴走しないよう設けられたブレーキだ。・・・だが段々に、なし崩してき的な骨抜きの速度が増していたのも確か」と現状への憂慮を述べた上で、最後をこう結んでいる。「裁判長は判決直前に退官している。このブレーキも、裁判官人生の最後に踏み込まれたのである。」
ブレーキを踏んだ二人の勇気ある男たちに心からのリスペクトを送りたい。こういう立派な職業人をこの国はまだ持っているということを誇りに思う。
ちなみに、名古屋高裁判決は、慰謝料などの訴えそのものは却下されているために、国側が勝訴したということになっている。したがって、原告側が上告しないので、判決が確定するということになる。胸がすく話ではないか。政府や防衛省、自衛隊幹部が眉をしかめている顔が目に浮かぶ。明白な憲法違反であることが、「憲法違反である」と言われた、あまりにも当たり前の話なのであるが、しかしこの当たり前のことがちゃんと言われたということの意義は実に大きい。
航空幕僚長は、この判決に関して「そんなの関係ねえ」とうそぶいたという。あきれて物も言えない。(この幕僚長には海パン姿でテレビに出てもらいたいぐらいの気持ちだ。)
しかし、「そんなの関係ねえ」というのは言い得て妙。これが彼らの本音だろう。軍隊というのはそういうものなのだ、ということを改めて認識する。
アメリカが最も明白な例であるが、軍隊が大きくなると必ず世界は悲劇を味わうことになる。一部の特権階級や死の商人たちを除いては。
イザヤ書2章4節
彼らは剣を打ち直して鋤とする。
槍を打ち直して鎌とする。
国は国に向かって剣を上げず
もはや戦うことを学ばない。