2011年 03月 02日
赦せないことの不自由 |
昨日(3月1日)の東京新聞夕刊 「自著を語る」
『六月の輝き』 不自由な心 どう折り合う
作家 乾ルカさん
Chunichi Book Web 自著を語る 著者が想いをつづる
経歴を見ると、オール読物賞新人賞を取ったり、直木賞候補になっている人らしいが、僕には初めて聞く名。しかし、「ルカ」という名前がぱっと目に飛び込んできて、興味をひかれて読んでみた。
残るもう一つだが、それは『憎しみと許し』である。二十代前半、私には心から憎い相手がいた。その心情に至った経緯をこの場で詳(つまび)らかにするのはいかがなものかと思うから、いたというだけにとどめておくが、おかげで当時の私はいつもその相手のことを考え、怯(おび)え、憎悪していた。
その人への憎悪にとらわれていると自覚したとき、私は不自由を痛感した。自分の心なのに、支配されている――私は自由になるためにどうすればいいのか考えあぐね、その末に、相手の行為を許すことはできないだろうか、と思った。
このような考え方をした背景には、カトリック系の幼稚園に通っていたせいもあるだろう。毎日「主の祈り」を唱え、許すという行為の重要性を刷り込まれ育ったのだ。しかし実際のところ、それは非常に困難だった。好きな人の過ちなら、おそらく許せる。だが相手が憎ければ話は別だ。
拙著の中では、憎しみを抱く登場人物が複数登場する。彼らの心にどう折り合いをつけさせるかは、とても難しい問題で、私は都度迷った。
人は神のごとくに人を許せるのか。悩みながら、私はこの話を書いた。そして書き終えた今も、まだ悩み考え続けている。
( 集英社 ・ 一四七〇円 )
幼稚園児の心に「主の祈り」が刷り込まれた。
ゆるすという課題がその人生に与えられたのだから、大変なことだ。
でも、ゆるせない自分の現実を知るからこそ、神様にゆるされているということを思わずにおれなくなるし、るし、魂の自由のことを考えざるをえなくなる。
本当に、ゆるせなずにがんじがらめになっている自分をみつめるって大事なことだよね。
ルカさんが最後に「まだ悩み考え続けている」というのがいい。
説教者もまた、「ゆるしの福音」を語りながら、憎しみや拒否の心に縛り付けられている自分というものに悩み考え続けなければならないのだろう。
この本、ぜひ読んでみたい。
『六月の輝き』 不自由な心 どう折り合う
作家 乾ルカさん
Chunichi Book Web 自著を語る 著者が想いをつづる
経歴を見ると、オール読物賞新人賞を取ったり、直木賞候補になっている人らしいが、僕には初めて聞く名。しかし、「ルカ」という名前がぱっと目に飛び込んできて、興味をひかれて読んでみた。
残るもう一つだが、それは『憎しみと許し』である。二十代前半、私には心から憎い相手がいた。その心情に至った経緯をこの場で詳(つまび)らかにするのはいかがなものかと思うから、いたというだけにとどめておくが、おかげで当時の私はいつもその相手のことを考え、怯(おび)え、憎悪していた。
その人への憎悪にとらわれていると自覚したとき、私は不自由を痛感した。自分の心なのに、支配されている――私は自由になるためにどうすればいいのか考えあぐね、その末に、相手の行為を許すことはできないだろうか、と思った。
このような考え方をした背景には、カトリック系の幼稚園に通っていたせいもあるだろう。毎日「主の祈り」を唱え、許すという行為の重要性を刷り込まれ育ったのだ。しかし実際のところ、それは非常に困難だった。好きな人の過ちなら、おそらく許せる。だが相手が憎ければ話は別だ。
拙著の中では、憎しみを抱く登場人物が複数登場する。彼らの心にどう折り合いをつけさせるかは、とても難しい問題で、私は都度迷った。
人は神のごとくに人を許せるのか。悩みながら、私はこの話を書いた。そして書き終えた今も、まだ悩み考え続けている。
( 集英社 ・ 一四七〇円 )
幼稚園児の心に「主の祈り」が刷り込まれた。
ゆるすという課題がその人生に与えられたのだから、大変なことだ。
でも、ゆるせない自分の現実を知るからこそ、神様にゆるされているということを思わずにおれなくなるし、るし、魂の自由のことを考えざるをえなくなる。
本当に、ゆるせなずにがんじがらめになっている自分をみつめるって大事なことだよね。
ルカさんが最後に「まだ悩み考え続けている」というのがいい。
説教者もまた、「ゆるしの福音」を語りながら、憎しみや拒否の心に縛り付けられている自分というものに悩み考え続けなければならないのだろう。
この本、ぜひ読んでみたい。
by boxy-diary
| 2011-03-02 10:13
| 本・雑誌