2010年 09月 27日
産経新聞の記事 |
Kさんが、ネット上でホメオパシーに関する報道があると知らせてくれた。
産経新聞の9月26日配信の記事・・・ホメオパシーは有効? 「副作用もないが治療効果もない」VS「科学的に有効性が証明」
(以下、産経新聞の記事)
植物などを希釈させた水を砂糖玉にしみこませて作る「レメディー」を服用する代替療法「ホメオパシー」の有効性などの議論が活発化している。8月末に日本学術会議が、ホメオパシーの治療効果を否定する談話を出したことがきっかけだ。これを受け、ホメオパシー関連団体が「科学的根拠はある」などと反発。厚生労働省も実態把握に乗り出した。ホメオパシー利用者が現代医療を拒否したために死亡したとされるケースもあり、議論の行方は予断を許さない。
■医師会なども学術会議に賛同
8月24日、各省庁などに政策提言を行う内閣府の特別の機関、日本学術会議は、金沢一郎会長(神経内科学)名で「ホメオパシーについての会長談話」を出した。
談話は、ホメオパシーで摂取するレメディーについて、「植物などを水で10の60乗倍希釈してつくったものを砂糖玉にしみこませたもので、元の物質が含まれないのは誰でも理解できるはず」と指摘し、医学誌の論文を提示した上で「効果はプラセボ(偽薬)と同じで、有効性がないことが科学的に証明されている」と切り捨てた。
日本医師会など9団体も日本学術会議の会長談話に賛同する声明を発表したほか、厚生労働省はホメオパシーなどの代替医療の実態把握に乗り出している。厚労省では「個別の代替医療の有効性についていいとかダメとかは言えないが、学術会議の意向は重く受け止める」としている。
これに対して、日本の代表的なホメオパシー関連団体の1つ「日本ホメオパシー医学協会」(東京都世田谷区)は、会長談話について反論を展開した。「ホメオパシーの有効性を否定する論文の数は、ほんのわずかしかありません。しかも、学術会議が(効果がないことの)根拠とした論文は欠陥論文です。一方、有効性を肯定する論文は山ほどあります」。
■相次ぐ死亡ケース
そもそも学術会議が談話を発表した背景には、ホメオパシーにからんだ死亡事故が相次いだことがある。
新生児の頭蓋内出血の予防に必要とされるビタミンK2の代わりにレメディーを投与されていた山口市の生後2カ月の女児が、昨年10月にビタミンK欠乏性出血症で死亡したとして、女児の母親が、レメディーを投与したホメオパシー療法家の助産師を相手に、損害賠償を求めて提訴していたことが今年7月発覚した。
また、今年5月には、東京の多摩地区のホメオパシー利用者の悪性リンパ腫の女性=当時(43)=が、通常の医療をほとんど受けずに死亡したとみられるケースもあった。女性は、症状の悪化をホメオパシーでいう「好転反応」ととらえていたとされる。ホメオパシーでは、レメディー使用後の症状の悪化は、健康を回復するための一時的なものととらえている。
こうした死亡事故が起きているにもかかわらず、ホメオパシー利用者のネット上での体験談の投稿などが絶えることはなく、“信奉者”は減る気配を見せない。
日本ホメオパシー医学協会の会長が学長も兼務するホメオパシー専門学校のHPの掲示板には、娘がやけどをしたという母親の投稿に「やけどには蒸気をあてる方が効果的」などのホメオパシー療法家のアドバイスが書かれている。
中には“医療ネグレクト”だとネット上で騒動になった書き込みもあった。腎臓病の子どもを持つ母親が7月15日に「(子供が)レメディーをとると顔がはれて足がむくみ、尿蛋白も出る。このままレメディーで腎臓をケアしたい」と書き込んだ。山口市の新生児がビタミンK欠乏症で死亡した事故が報道された直後だったため、ネットでは再びホメオパシーで子供の命が失われかねないなどとして、掲示板を見た複数の人が警察や児童相談所に通報した。実際には、子供の症状は書き込みよりも軽かったため、騒動は収まったが、体験談の掲示板には現在、ホメオパシー療法家からのアドバイスは停止されている。
■現代医療の側の問題も
なぜ利用者は減らないのか。日本ホメオパシー医学協会の回答はシンプルだ。「第一に有効であること、第二に安全であるという単純な理由によります」。しかし、学術会議の唐木英明副会長(農学)は「ホメオパシーはまじないや祈祷(きとう)に過ぎない。一般人が自分でホメオパシーを選択するなら自己責任だが、医療を生業にする人が患者に薦めたために、山口のような訴訟問題になった」とする。実際、日本助産師会の調査で、開業助産所433カ所のうち36カ所で、過去2年間に新生児に必要とされるビタミンK2を投与せず、レメディーを投与していたケースがあったことが判明している。
しかし、唐木副会長は、ホメオパシーが広まるのは「現代医療のすき間を突かれている」と現代医療の側の問題点も指摘する。「ホメオパシー療法家は、利用者の悩みをきちんと聞いている。現代医療も心のケアをどうするのか真剣に考える段階に来ている」。
ホメオパシー療法家の健康相談は、約1時間かけて相談者に適合するレメディーを指示するもので、費用は大人で8千円から1万5千円だという。レメディーの価格はさまざまだが、一例としては、約30粒の小瓶に入ったもので580円のものなどがあり、36種類のセット販売もされているようだ。砂糖玉だと考えれば非常に高価といえる。唐木副会長は「高価なレメディーをめぐるビジネスを手放したくない人がたくさんいるのは事実だ。ホメオパシーが広まる背景にはこうした事情もあることは多くの人が指摘している」と話している。
(引用終わり)
なぜホメオパシーに走る人が出るか、という点について、学術会議副会長の発言を紹介しているが、「現代医療のすき間をつかれている」という分析はあたっていると思う。
医師への不満や不信から、現代医療に背を向けて代替医療にすがっていく人が少なからずいる、というのを今回の一件に直面して知った。
代替療法・民間療法に従事する人たちは、人間の心と体の密接な関係をよく心得ているから、痛みに共感し、悩みを丁寧にきき、役に立つ実践的アドバイスを丁寧にする。その治療姿勢を、大病院のお医者さんたちも少し見習ってくれたら、と思ってしまうのは僕だけではないだろう。
患者としても、長時間待たされた上に、医者はコンピューターの画面ばかり眺めて、ろくに自分を見もせずに、「はい、この薬のんどいて」などと乱暴に言うだけ・・・なんて目にあったら、なおるものもなおらなくなってしまう。現代医学に従事する人たちが、もう少し「病は気から」という面を重視して、患者心理をわきまえた接し方をしてくれるだけでも、状況は変わるだろう。
ホメオパシーは、そういう「すき間」を非常に巧みにとらえている。カウンセリング的な効果というのは馬鹿にできないものがある。実際、風邪や疲労、ちょっとした体調不良といったことなら、プラシーボ(偽薬)効果で十分、という場合も多いだろう。そのような「分」というか「守備範囲」を、ホメオパシーの人たちがしっかり弁えてくれているならばよいのだが。
しかしそこは商売。患者をできるだけ自分の手元においておきたくなる、というのは自然な心理なのだろう。問題は、患者が信頼してくれたことにより、「成功」と思えるような事例が偶然にいくつか続いたりしたら、「私はこんなにいろいろな病気をなおせるのだ」という過剰な自信が療術師にむくむくとわきあがってしまうことだ。
しかも大変困ったことには、自信過剰な、自分を「カリスマ」だと錯覚してしまっているような治療家のほうが、患者をひきつけやすいし、心理的効果は大きくなる。なんの根拠もなくても、「なおせますよ。私にまかせなさい」と言ってくれる人を患者は求める。したがって、謙虚な人より、傲慢な人のほうが「繁盛」してしまう。それで患者が増え、賞賛の声が多く耳に入ってくるようになると、錯覚はいよいよ強くなり、「なんでもなおせる」という全能感が出てきたら、いよいよ危ない領域に進んでいくことになる。
産経新聞の9月26日配信の記事・・・ホメオパシーは有効? 「副作用もないが治療効果もない」VS「科学的に有効性が証明」
(以下、産経新聞の記事)
植物などを希釈させた水を砂糖玉にしみこませて作る「レメディー」を服用する代替療法「ホメオパシー」の有効性などの議論が活発化している。8月末に日本学術会議が、ホメオパシーの治療効果を否定する談話を出したことがきっかけだ。これを受け、ホメオパシー関連団体が「科学的根拠はある」などと反発。厚生労働省も実態把握に乗り出した。ホメオパシー利用者が現代医療を拒否したために死亡したとされるケースもあり、議論の行方は予断を許さない。
■医師会なども学術会議に賛同
8月24日、各省庁などに政策提言を行う内閣府の特別の機関、日本学術会議は、金沢一郎会長(神経内科学)名で「ホメオパシーについての会長談話」を出した。
談話は、ホメオパシーで摂取するレメディーについて、「植物などを水で10の60乗倍希釈してつくったものを砂糖玉にしみこませたもので、元の物質が含まれないのは誰でも理解できるはず」と指摘し、医学誌の論文を提示した上で「効果はプラセボ(偽薬)と同じで、有効性がないことが科学的に証明されている」と切り捨てた。
日本医師会など9団体も日本学術会議の会長談話に賛同する声明を発表したほか、厚生労働省はホメオパシーなどの代替医療の実態把握に乗り出している。厚労省では「個別の代替医療の有効性についていいとかダメとかは言えないが、学術会議の意向は重く受け止める」としている。
これに対して、日本の代表的なホメオパシー関連団体の1つ「日本ホメオパシー医学協会」(東京都世田谷区)は、会長談話について反論を展開した。「ホメオパシーの有効性を否定する論文の数は、ほんのわずかしかありません。しかも、学術会議が(効果がないことの)根拠とした論文は欠陥論文です。一方、有効性を肯定する論文は山ほどあります」。
■相次ぐ死亡ケース
そもそも学術会議が談話を発表した背景には、ホメオパシーにからんだ死亡事故が相次いだことがある。
新生児の頭蓋内出血の予防に必要とされるビタミンK2の代わりにレメディーを投与されていた山口市の生後2カ月の女児が、昨年10月にビタミンK欠乏性出血症で死亡したとして、女児の母親が、レメディーを投与したホメオパシー療法家の助産師を相手に、損害賠償を求めて提訴していたことが今年7月発覚した。
また、今年5月には、東京の多摩地区のホメオパシー利用者の悪性リンパ腫の女性=当時(43)=が、通常の医療をほとんど受けずに死亡したとみられるケースもあった。女性は、症状の悪化をホメオパシーでいう「好転反応」ととらえていたとされる。ホメオパシーでは、レメディー使用後の症状の悪化は、健康を回復するための一時的なものととらえている。
こうした死亡事故が起きているにもかかわらず、ホメオパシー利用者のネット上での体験談の投稿などが絶えることはなく、“信奉者”は減る気配を見せない。
日本ホメオパシー医学協会の会長が学長も兼務するホメオパシー専門学校のHPの掲示板には、娘がやけどをしたという母親の投稿に「やけどには蒸気をあてる方が効果的」などのホメオパシー療法家のアドバイスが書かれている。
中には“医療ネグレクト”だとネット上で騒動になった書き込みもあった。腎臓病の子どもを持つ母親が7月15日に「(子供が)レメディーをとると顔がはれて足がむくみ、尿蛋白も出る。このままレメディーで腎臓をケアしたい」と書き込んだ。山口市の新生児がビタミンK欠乏症で死亡した事故が報道された直後だったため、ネットでは再びホメオパシーで子供の命が失われかねないなどとして、掲示板を見た複数の人が警察や児童相談所に通報した。実際には、子供の症状は書き込みよりも軽かったため、騒動は収まったが、体験談の掲示板には現在、ホメオパシー療法家からのアドバイスは停止されている。
■現代医療の側の問題も
なぜ利用者は減らないのか。日本ホメオパシー医学協会の回答はシンプルだ。「第一に有効であること、第二に安全であるという単純な理由によります」。しかし、学術会議の唐木英明副会長(農学)は「ホメオパシーはまじないや祈祷(きとう)に過ぎない。一般人が自分でホメオパシーを選択するなら自己責任だが、医療を生業にする人が患者に薦めたために、山口のような訴訟問題になった」とする。実際、日本助産師会の調査で、開業助産所433カ所のうち36カ所で、過去2年間に新生児に必要とされるビタミンK2を投与せず、レメディーを投与していたケースがあったことが判明している。
しかし、唐木副会長は、ホメオパシーが広まるのは「現代医療のすき間を突かれている」と現代医療の側の問題点も指摘する。「ホメオパシー療法家は、利用者の悩みをきちんと聞いている。現代医療も心のケアをどうするのか真剣に考える段階に来ている」。
ホメオパシー療法家の健康相談は、約1時間かけて相談者に適合するレメディーを指示するもので、費用は大人で8千円から1万5千円だという。レメディーの価格はさまざまだが、一例としては、約30粒の小瓶に入ったもので580円のものなどがあり、36種類のセット販売もされているようだ。砂糖玉だと考えれば非常に高価といえる。唐木副会長は「高価なレメディーをめぐるビジネスを手放したくない人がたくさんいるのは事実だ。ホメオパシーが広まる背景にはこうした事情もあることは多くの人が指摘している」と話している。
(引用終わり)
なぜホメオパシーに走る人が出るか、という点について、学術会議副会長の発言を紹介しているが、「現代医療のすき間をつかれている」という分析はあたっていると思う。
医師への不満や不信から、現代医療に背を向けて代替医療にすがっていく人が少なからずいる、というのを今回の一件に直面して知った。
代替療法・民間療法に従事する人たちは、人間の心と体の密接な関係をよく心得ているから、痛みに共感し、悩みを丁寧にきき、役に立つ実践的アドバイスを丁寧にする。その治療姿勢を、大病院のお医者さんたちも少し見習ってくれたら、と思ってしまうのは僕だけではないだろう。
患者としても、長時間待たされた上に、医者はコンピューターの画面ばかり眺めて、ろくに自分を見もせずに、「はい、この薬のんどいて」などと乱暴に言うだけ・・・なんて目にあったら、なおるものもなおらなくなってしまう。現代医学に従事する人たちが、もう少し「病は気から」という面を重視して、患者心理をわきまえた接し方をしてくれるだけでも、状況は変わるだろう。
ホメオパシーは、そういう「すき間」を非常に巧みにとらえている。カウンセリング的な効果というのは馬鹿にできないものがある。実際、風邪や疲労、ちょっとした体調不良といったことなら、プラシーボ(偽薬)効果で十分、という場合も多いだろう。そのような「分」というか「守備範囲」を、ホメオパシーの人たちがしっかり弁えてくれているならばよいのだが。
しかしそこは商売。患者をできるだけ自分の手元においておきたくなる、というのは自然な心理なのだろう。問題は、患者が信頼してくれたことにより、「成功」と思えるような事例が偶然にいくつか続いたりしたら、「私はこんなにいろいろな病気をなおせるのだ」という過剰な自信が療術師にむくむくとわきあがってしまうことだ。
しかも大変困ったことには、自信過剰な、自分を「カリスマ」だと錯覚してしまっているような治療家のほうが、患者をひきつけやすいし、心理的効果は大きくなる。なんの根拠もなくても、「なおせますよ。私にまかせなさい」と言ってくれる人を患者は求める。したがって、謙虚な人より、傲慢な人のほうが「繁盛」してしまう。それで患者が増え、賞賛の声が多く耳に入ってくるようになると、錯覚はいよいよ強くなり、「なんでもなおせる」という全能感が出てきたら、いよいよ危ない領域に進んでいくことになる。
by boxy-diary
| 2010-09-27 23:50
| ホメオパシー