前を見て歩こう |
昨日の朝は、6時15分でもまだ薄暗かった。家を出てすぐのところで、暗がりの中を向こうから黒い人影がこちらに向かってくるのが見えた。中学か高校ぐらいの年代だろうか。黒いヨットパーカーを着た男の子。顔を地面に向け、ひたすら足元だけを見つめて歩いている。僕はさっと左に身をかわしながら、つとめて明るく「ぶつかるよぉ~」と小声でささやく。その子は、ようやく顔をあげて、はっとした顔。
何かいやなことがあったのだろうか。つらいことがあったのだろうか。それとも夜通し遊んで疲れきって歩いていたのだろうか。
少年の気持ちを想像しながら公園に向かう。
そして自分のことを考える。
足元をみつめ、視野を狭くして、何事か考え込みながら歩く。そんな時、目の前に、向こうからやってくるものは目に入らない。どんなものが目の前にあろうと、気がつかない。
前を見て歩け、少年よ。
背筋を伸ばし、しっかりと前方をみつけて歩け、自分。